「血液検査」でわかる病気はご存じですか? 異常が指摘されるケース・検査項目も医師が解説!
健康診断はやりたくない…という患者さんとの会話で見つけた記事です。
「血液検査」でわかる病気はご存じですか? 異常が指摘されるケース・検査項目も医師が解説!
高血圧や脂質異常、貧血などの生活習慣病リスクを早期に発見する大切な手がかりとなる「血液検査」。
今回は、血液検査の数値の変化から体の内側の異変を知り、予防や改善に役立てるポイントを先生に解説していただきました。
血液検査で生活習慣病のリスクがわかる?
血液検査だけで、生活習慣病のリスクがわかるのはなぜですか?
先生:
血液は体中を巡っており、様々な臓器や代謝の状態を反映しています。血液検査では様々な項目を数値化しますが、特に「血糖値」「脂質」「ヘモグロビン」「腎機能」「肝機能」などの数値をチェックすることで、生活習慣がどれだけ体に負担をかけているかを知ることができます。
血液検査で気づく生活習慣病には、どのようなものがありますか?
先生:
代表的なものとして、「高血圧」「脂質異常症」「糖尿病」「肥満」などのリスクを調べることができます。また、生活習慣病には含まれませんが、生活習慣病と密接に関係している「貧血」のリスクの有無もわかります。
血液検査は、どのくらいの頻度で受けた方がいいですか?
先生:
健康診断としては、基本的に年1回が目安です。ただし、診断結果で異常値を指摘された場合は速やかに医療機関を受診し、医師の指示に従って継続的に血液検査を受けましょう。
血液検査の結果を見る際、気をつけることはありますか?
先生:
数値の高さ・低さだけでなく、経時的な推移をチェックすることも大切です。たとえ基準値内であっても、年々数値がじわじわ上昇している場合は、将来的にリスクが高まっている可能性も考えられます。異常値だけを見るのではなく、過去の結果との比較もポイントです。
時系列で見るのが大事なのですね。
先生:
そのためにも、医療機関を受診する場合には手元にある診断結果を複数年分持参し、変化を医師に見てもらうのが有効です。
血液検査で生活習慣病が指摘されるケース
なぜ、高血圧の人は血液検査をする必要があるのですか?
先生:
高血圧の原因を調べるために、血液検査をおこなうことがあります。例えば、甲状腺や副腎で作られるホルモンの異常によって血圧が上がることがあるため、これらの数値を調べることで血圧が上昇している原因を推測することができるのです。
高血圧の原因を推測するのに、血液検査が有効なのですね。
先生:
はい。高血圧になると全身の血管に負担がかかりますが、まず影響が出やすいのが腎臓です。そのため、腎臓の機能をチェックすることは、臓器へのダメージを見つけるうえでとても重要です。腎機能が低下すると尿酸値が高くなることもありますし、生活習慣病と関わりのある脂質やHbA1c(ヘモグロビンA1c)などもあわせて調べ、今後の予防や対策を考えていく必要があります。
血液検査の数値から多くのことがわかるのですね。
先生:
それから、血液検査の結果でカリウムの数値が低い場合には、血圧が高くなっていないか注意が必要です。さらに、HbA1cの値が高いと糖尿病の可能性があり、それも高血圧と深く関係しています。こうした数値から、直接ではなくても「高血圧の問題があるかもしれない」と気づくきっかけになることがあります。
脂質異常症は、どの数値に注意すればいいのでしょうか?
先生:
LDL(悪玉)コレステロール、HDL(善玉)コレステロール、中性脂肪(TG)の3つが重要です。LDLコレステロールや中性脂肪の数値が高い、またはHDLコレステロールの数値が低い場合には脂質異常症と診断され、動脈硬化から心筋梗塞や脳梗塞などの心血管病に至る高リスク状態です。
コレステロールを気にすればいいのですね。
先生:
そのほかにも、最近ではLp(a)[リポプロテイン(a)]という値にスポットライトが当たっています。遺伝的に数値が高いか低いかが決まっており、生活習慣などでは大きく変えることができません。Lp(a)の値が高い人は、将来、心筋梗塞などのリスクが増加すると判明しており、動脈硬化の危険因子として注目されています。
次に、貧血と指摘されるのは、どういう数値のときですか?
先生:
様々な検査項目を用いますが、特に重要なのはHb(ヘモグロビン)です。Hbの値が男性で13.0未満、女性で12.0未満だと貧血と指摘されます。あわせて、赤血球やヘマトクリット、血清鉄、フェリチン(鉄の貯蔵量の指標)などの数値をみることで貧血の種類を見極めることができ、治療に役立てることができます。
血液検査で複数の異常を同時に指摘される人も多いのでしょうか?
先生:
実際には「脂質が高い」「血圧が高い」「貧血傾向あり」など、複数の異常が同時に出る人も珍しくありません。生活習慣病は互いに関連し合い、1つの異常がほかのリスクを引き上げることもあるためです。
血液検査で生活習慣病を指摘されたときの対処法
異常値が出たら、すぐに治療が必要になるのでしょうか?
先生:
数値やリスクの程度によって対策は変わりますが、軽い場合はまず生活習慣の改善から始めるのが一般的です。食事や運動、睡眠の見直しが大切ですが「自分では何が悪いのかよくわからない」という人も多いと思います。そんなときは医師に相談して、どこに気をつければいいのか具体的なアドバイスをもらうのがおすすめです。最近では、管理栄養士に食生活の相談ができる民間のサービスもあります。そうしたサポートを上手に活用するのも1つの方法です。
具体的に、どのように生活を改善すればいいのでしょうか?
先生:
まず食事について言えば、全ての料理にしっかり味をつけるのではなく、味が濃いものと薄いものを組み合わせて、全体の味に強弱をつけるのがポイントです。例えば、付け合わせの野菜や小鉢は、あまり塩分のないものにすると、自然と全体の塩分量を減らすことができます。また、野菜には食物繊維が多く含まれており、健康を維持するために重要です。特に野菜を生で食べたり、茹でたときのスープごと飲んだりすると、カリウムもしっかりと摂れます。カリウムには体の中の余分な塩分を外に出す働きがあるので、塩分を摂り過ぎたときのリセットにも役立ちます。
運動については、どのようなことを意識すればいいのでしょうか?
先生:
有酸素運動は、たとえ週に1回10分だけでも、全く運動しないよりはずっと効果があります。大切なのは、無理なく続けることです。例えば、軽いジョギングでは誰かと一緒に走っていて、会話ができるくらいのペースがちょうどいい目安です。
睡眠で気をつけるべきことがあれば教えてください。
先生:
夜更かしを控えて、ぐっすり眠れるようにすることも大切です。最近では、スマートリングやスマートウォッチなどを使って、自分の睡眠の質をチェックすることもできます。どれくらいよく眠れているかを「見える化」することで、生活を見直すきっかけにもなるでしょう。
投薬治療はすぐに始めた方がいいのでしょうか?
先生:
「薬を飲み始めると一生やめられないのでは?」と心配される人もいますが、最近は体に優しく、効果的な薬も増えています。特に、動脈硬化の進行を防ぐためには、早めに薬を使うという選択肢もあります。もちろん、生活習慣の改善でよくなるケースもありますが、まずは薬で数値を安定させて、その後の生活習慣が整えば薬を減らしたりやめたりすることも可能です。例えば、ダイエット薬としての効能もある糖尿病の治療薬で治療すると、体重の減少に伴って血圧やコレステロールの数値も一緒に改善します。薬を上手に使って体調を整えるのも、1つの有効な方法です。
血液検査での指摘を放置すると、どうなるのでしょうか?
先生:
初期は自覚症状がない分放置されやすいのですが、場合によっては動脈硬化が進行しやすくなります。太い血管が詰まれば心筋梗塞や脳卒中を引き起こすこともありますし、細い血管が詰まれば認知症のリスクにもなり得ます。小さな異常のうちに対処すれば、将来の大きな病気を防ぐことができるため、異常を指摘されたら早めに医療機関を受診しましょう。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
先生:
生活習慣病は単に食べ過ぎや運動不足だけでなく、体の中にたまった内臓脂肪が慢性的な炎症を引き起こし、炎症が血管を傷つけ、脳の炎症は認知症のリスクを上げ、細胞のがん化が促進される危険な状態と考えられています。こうした状態は、有効な薬で改善できることもわかってきました。だからこそ、できるだけ早い段階で医療機関を受診し、適切な治療やアドバイスを受けることが大切です。病気の進行や寿命の短縮を防ぐためにも、生活習慣の見直しと合わせて、医師のサポートを受けてほしいと思います。
生活習慣病は、内臓脂肪による炎症や老化が関係する現代的な病気です。早めに医療機関を受診し、薬や生活改善を上手に取り入れることで、将来の病気リスクを減らすことができます。無理なく続けられる方法を見つけ、健康的な毎日を目指しましょう。










